ご覧になった方も多いかと思いますが、2021年2月7日にスーパーボウル中継で放映された北米トヨタのCMのお話しです。
スーパーボウルの中継では特別なコマーシャルが出ることで有名ですが、何よりもすばらしくて印象に残ったのが、北米トヨタのコマーシャルでした。
タイトルは「Upstream」（上流へ）
主人公はパラリンピック競泳の女王、ジェシカ・ロング選手
ジェシカ・ロングは、アメリカのパラリンピック競泳ゴールドメダリスト選手で、4つのパラリンピック競技に出場し、23個のメダルを獲得したという偉業の持ち主です。
ストーリーは、彼女の半生にスポットを当てた60秒間の作品ですが、これまで見た中で最も美しく、力強く、心に突き刺さるコマーシャルでした。
何度見ても、感動で涙が止まりまてん。このコマーシャルを作ったクリエイティブ・ディレクターに金メダルをあげたいくらいです（もう貰ってるかもだけど‥）
今日は個人的に感動したこのコマーシャルを皆さんに知っていただきたく、ストーリーをつづっていきます。
ロング選手が泳ぎ出すと、彼女の過去にさかのぼっていきます。
この泳いでさかのぼるという設定がまず、すばらしい。
養子エージェントが電話をかけて
「ロングさんですか？」と尋ねています。
養子にできる女の子の赤ちゃんが見つかりました」
「ただしお伝えしておかなくてはならないことがあります。
この子はシベリア生まれで、稀な障害を抱えています」
「両脚は手術で切断する必要があります」
「こんなことをお聞きになるのはおつらいでしょうが、彼女の人生は決してやさしいものではないでしょう」
受話器を手にしたまま黙っているロング夫人。
「ロングさん？」
そこで夫人は、こう答えます。
「決してやさしい人生ではないでしょう、けれどもすばらしいものであるに違いありません」
広告自体に一切車は出てこないながらも、とても力強い広告。
オリパラリンピックのチーム・アメリカのスポンサーとしてのメッセージ広告となっています。
彼女は実際にロシアの生まれで、生後13ヶ月でアメリカに養子縁組されて、ボルティモアで育ち、それから水泳選手として金メダルに輝いた人物。
ロシアのイルクーツクで十代の両親の間に生まれ孤児院に預けられ、生後13カ月でアメリカ人のロング夫婦の養子になったけれど、腓骨ヘミメリアという、生まれつき腓骨（脚の骨の細い方）が無い先天性欠損症を持っており、18カ月で両下肢を切断。義足で歩けるようになるまで、ジェシカは25回もの手術に耐えてきた。
その後、両親の勧めで、体操、チアリーディング、アイススケート、自転車、トランポリン、ロッククライミングとさまざまなスポーツに挑戦。
そのなかでも好きだったのが、祖父母の家のプールで泳ぐこと。
「プールの中では、脚がないことを完全に忘れられた」と彼女は言っている。
水泳を始めてからは10歳で強豪水泳チームに加わった。とても勝ち気な子どもだったジェシカは、プールで怒りや欲求不満を解消していた。しかし同時に、プールでは本当に自由で有能になれると感じていた。
水泳を始めてからわずか2年目の2004年、アテネ・パラリンピックに初出場し、いきなり金メダルを3つ獲得。その後3回のパラリンピックに出場し、合計で23個（うち13個が金）のメダルを手にするなど、数々の記録を打ち立てた。
彼女がロング家に引き取られなかったら、今日のロング選手は存在しなかったわけで、障害があっても引き取った養父母の心の広さ、そして本人の努力と、すべての人に可能性があることのすばらしさを感じます。重度の身体障害があると、あらかじめわかっている子を喜んで迎えるロング夫妻の勇気と決意と愛に感服します。
人間には計りしれない可能性があり、希望があることを感じさせてくれる60秒間でした。
チームトヨタ所属のパラリンピック選手であるジェシカ選手は「このCMが、金メダルや結果だけではなく、そこに至る挑戦の旅に光を当ててくれたことを嬉しく思っています」とコメントしている。
うぅぅ 泣ける
ちなみに金メダル級のクリエイティブ・ディレクターは、インド出身の映画監督・映像作家・CMディレクターで、アメリカで活躍中のターセム・シン。
この方です?
長編映画では2000年の「ザ・セル」2011年の「インモータルズ」2012年の「白雪姫と鏡の女王」など、怖いものからファンタシーからSFからコメディーまで、なんでも来いの、私が金メダルをあげるまでもないくらいのビッグな方でした。そりゃそうだ。
レディー・ガガの「911」を題材にしたショートムービーなんかも撮っているみたいなので、興味がある方はCheck it out. してね。
長くなりましたが、そんなジェシカ・ロング選手の競技は8月28日（土）午前10時53分〜です。